WOWOWで放送されていたので、観てみました。
就活、友情、恋愛、今を生きる若者のリアルが描かれている青春群像劇だと思っていたんです、観るまでは。
観終わってみるとこのお話は「SNS世代をボコボコにする映画」だったのだと気づいたんです。
大学の演劇サークルに全力投球していた拓人(佐藤健)
拓人がずっと前から片想いをしている瑞月(有村架純)
瑞月の元カレで、拓人とルームシェアをしている光太郎(菅田将暉)
拓人たちの部屋の上に住んでいる、瑞月の友達の理香(二階堂ふみ)
就活はしないと宣言する、理香と同棲中の隆良(岡田将生)
みんなを見守っている、大学院生のサワ先輩(山田孝之)
理香の部屋を「就活対策本部」として定期的に集まる5人。
それぞれが抱く思いが複雑に交錯し、徐々に人間関係が変化していく。
拓人
拓人には昔演劇仲間で烏丸ギンジという親友がいて、彼はいま自分で劇団を立ち上げて自主公演を定期的にやっていて、劇中にたびたびこのギンジが主催するお芝居が登場するんですが、観ているこっちが恥ずかしくなっちゃうような内容なんです。
拓人はギンジがブログやTwitterで発信する情報をいちいちチェックしていて、就活のために演劇をやめてもなお、演劇への未練タラタラ。
拓人がギンジに延々ダメ出しをLINEでするんですが、ギンジはことごとく既読スルー、最初は穏やかに冷静に分析したギンジのダメな部分をLINEするのですが、連投するLINEには既読はつくけど全く返ってこない、そんな様子にだんだん拓人もイライラしてフリックの速度も上がる上がる。
でも冷静に分析しているつもりなのになぜが拓人が寂しそうなんですよ、アツい想いをぶつけているのに。
「頭のなかにあるうちは、いつだって、なんだって、傑作なんだよな。お前はずっと、その中から出られないんだよ。」
このセリフは素晴らしいと思います、何かを生み出そうと試みたことのある人にはグサって刺さるセリフでした。
隆良
このセリフを拓人はギンジと隆良の二人に言い放つんですが、隆良のビジュアルはいかにも【意識高い系男子】。パーマに細めのボストンタイプフレームのメガネ、大学を休学して自分探しの旅、自分用の名刺を作り、口癖は「どこどこの誰々と一緒に・・・」。
隆良は言ってみればクリエイターの卵、自己を高め、様々な人脈を広げ、その中で生み出される何かで自分というものを表現しようともがく青年、そんな隆良に瑞月が声を荒げる場面があります。
隆良が会社に属することの意味の無さを偉そうに熱弁するんですが、きっと瑞月はその言葉の裏には「カッコつけ」しか見えなかったんだと思います。
隆良と彼女の里香が一緒に出かけているのに直接話さずSNS上で会話するのを、拓人は光太郎と瑞月にスマホの画面を見せ、その場が一瞬ピリっとするシーンがありました。確かに自分も、カップルがデート中にSNSで会話するのを目にして疑問に思うことがあります。このシーンの光太郎と瑞月が言葉に詰まってしまうのは「拓人って人の行動いちいち監視する人なの?」って思ったからだとうんですよね。今までの付き合いで初めて拓人の闇を見た、そんな場面って現実にも起こり得るんですよね。
今の時代、自ら情報を発信してそれに”イイネ”をしてもらい承認欲求を満たす。自ら陰口を叩かれに行っては自滅する、そんな現代に生きる若者がこの「何者」が描いている人物像なのではないでしょうか。
光太郎
光太郎はそんな現代の若者像より少し人間らしくて、バンド活動に勤しみ、人を隔てる垣根をいともたやすく越えてくる存在。でもそんな光太郎みたいな人物はこのSNSの時代においては少々面倒な人間かもしれません。無自覚に人の心を傷つける、それも悪気はなく。そんな天真爛漫な光太郎の原動力は羨ましくもあり痛々しい過去、そんな理由で?って思えちゃう光太郎の芯の部分は魅力的に見えました。
瑞月
そんな光太郎に二度フラれた瑞月は、終盤声を荒げるまでは至って普通の女子なんです。インスタ映えする料理写真やスポットに行っちゃうような娘じゃないんです、そんな瑞月だから隆良に言い放つ言葉は、ホント心に刺さりました。自分も昔はクリエイター気取な部分もあり、完全に瑞月の言葉にノックアウトされました。だから隆良を見てると他人とは思えないんですよ。
サワ先輩
拓人はギンジと隆良が似ているとサワ先輩に言うシーンがあって、でもサワ先輩は隆良とは全然違うってのを一瞬で見抜いちゃうんですね。隆良ってのはそれくらい薄っぺらい人間なんです。というより、サワ先輩がスゴい存在で、この作品の中で唯一の良心と言っても良いくらい。拓人とギンジが頑張っている姿を知っていて、たぶん陰ながら応援してるんだと思うんです。こういう先輩ってそうそう出会えるもんじゃありません。もし、出会えた人はラッキーです、その人との繋がりは大切にしてください。
理香
拓人の住む部屋の上階にたまたま住んでいた瑞月の友達の理香は、とにかく「私頑張ってます!」ってタイプ。と言うより、頑張ってる私カッコいいでしょ!とでも言いたげ。やっぱり意識高い系男子の彼女には意識高い系の女子、拓人たちが集まって就活対策をしているときでもタコのカルパッチョを作ってみたり、拓人が参加する予定のグループディスカッションにたまたま居合わせた理香は、拓人の発言を遮って発言すれば論点がズレた発言ばかり。でも登場人物の中で一番闇を感じるんです、どことなく目が死んでいるというかなんというか。
で、この映画の何がホラーかというと、我々が何気なくやっているSNSなんです。
SNSで晒されたとか、炎上したとか、詐欺にあったとか、そういう怖さじゃなくて、人間の二面性がSNSによって浮き彫りになり、そんな部分に自己を投影したらもう心をエグられます。
それだけに、SNSをしていない人にとってはなかなか共感しづらい部分もあるのではないかなぁと。
その昔mixiというSNSがあり(今もあるが)、創成期から参加していました。でもその時に知り合った人でいまだに続いている人たちってホント数えるくらいしかいません。
結局マイミクが何人いるとか、どんな人に足跡つけてもらったとか、マイミクのパーティに参加したとか、そういった内容をマイページに詰め込み、内面はスカスカなのにSNSという鎧を身にまとうと、あたかも違う人間に慣れたような気が当時はしてました。
今もそんな流れは変わらないんでしょうね、フォロワー数やいいねやリツイートがその人のステータスを表すことは決して無いのに、みんな必死に”ソコ”を目指している。
そうして聞かれるんです、あなたは「何者」?
この映画はそんな現代人の心の闇をさらけ出させるサイコ・ホラー
自分もTwitterやったりブログやったりしてますし、いいねやリツイートもらうとやっぱりどこかで嬉しいって思っちゃいますが、この映画を観たらそんなのどうでもよくなっちゃいました笑
もし、SNSをやっている人がいたら、観賞してみてください。彼らの世代ではなくても共感できますから、きっと。
劇中で理香が作っていたのはシンプルなタコのカルパッチョだけど、ちょっとアレンジして韓国風の味付けのカルパッチョをご紹介します。
材料(三人分)
刺身用タコ 10cm
スプラウト 適量
ソース
- コチュジャン 50g
- 長ネギみじん切り 1/3本
- 酢 25cc
- いりごま 大さじ1/2
- オリーブオイル 大さじ1
- ごま油 小さじ1/2
作り方
- ソースを良く混ぜ合わせる
- タコは皮を剥き吸盤を外し、薄切りにする
- 器にタコを盛り付け、オリーブオイル(分量外)をかけ、上からソースをかける。スプラウトをあしらったらごま油(分量外)を少々垂らす。
- 外した吸盤は荒く刻み、ソースと和えて皿に盛る。
今回はボイルしたタコの足を使ってますが、生のタコの場合はさっとゆがいて薄切りにして下さい。このソースは魚介はもちろん、茹でた豚や鶏などにも合います。上にあしらうスプラウトは青ネギやかいわれ大根など、色々アレンジしてみて下さい。
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