東京事変「緑酒」を読み解いてみた

いよいよ6月9日に発売になる東京事変10年ぶりのオリジナルアルバム「音楽」 中でも私が注目している一曲が、先行配信されたテレビ東京系『WBSワールドビジネスサテライト』エンディングテーマ曲「緑酒」の歌詞。 椎名林檎が紡ぎ出す詞には難解なものも多く、一度聞いただけではすんなり理解できない。だからといって無意味な歌詞かといえば全くそうではなく、聞き手がその意味を理解できたときに心に刺さる言霊があちこちに散りばめられている、だからこそこの難解な歌が大勢の心に届いているのではないだろうか。 そして、この「緑酒」である まずは歌詞に目を通してみて欲しい。
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緑酒

乾杯日本の衆今日は今日でまあ一つ美味しいかどうかはさておきだ各種生業お疲れさん

小さな頃描いた将来大人は列国の制度のめぼしき面選んでは取り入れ最終形態を拵えた

気付いたら違っていたバトンタッチが済んで自分らは扶養側へ責任を負う立場になった

時間がない金すらない無い無い尽くしと言う増してどうしてこう心身消耗してんだっけ

乾杯日本の衆信じていたい遍く全員善人でしょう疑念なぞ抱いても肝を突いちゃならん

大きな不安孕んだ正体憚る膨満感に噦いてどこから嚥下できようか未だ皆目消化不良だ

気付いたら許していたお年召した御仁と幼気な御子さん方は恥ずかしそうに黙ってんだ

ぺてんのない世の中を直ぐに作んなくちゃそう願わくばいっそ老いも若いも多弁であれ

自由よいいように搾取されないで安く売らないで終始貴様は誇り高くあって頼むよ自由

フェイクじゃない元来の意味を見せて騙るまじ腐るまじ追い続けていたい貴様をずっと

果たしても選ばれざる服従層と知らん間に選ばれし支配層を結ぶ争点自由という名の富

買い叩いて奪い合う尊厳乾杯日本の衆いつか本当の味を知って酔いたいから樹立しよう

簡素な真人間に救いある新型社会次世代へただ真っ当に生きろと云い放てる時遂に祝う

その一口ぞ青々と自由たる香さぞ染み入る事だろう伝う汗と涙が報われて欲しい皆の衆

自由よ愛しているもう遠去かんないで傍に抱き寄せて終始貴様を尊び敬って求める自由

鳴呼どうしたって意識せざるを得ない逃すまじ失くすまじ愛されてみたい貴様にやっと

Awakening

どうでしょうか、美しい・・・

閲覧するブラウザによっては崩れてしまうかもしれませんが、文字数が揃っている。

美しすぎます。

「緑酒」という言葉を辞書で調べてみると”緑色の酒” “美酒” となっており、歌詞の一言目も乾杯と書いていて、今の時代に生きる日本の衆に美味しいかどうかはさておき、お疲れ様、乾杯!とねぎらいの言葉から始まります。

小さな頃描いた将来大人は列国の制度のめぼしき面選んでは取り入れ最終形態を拵えた

気付いたら違っていたバトンタッチが済んで自分らは扶養側へ責任を負う立場になった

時間がない金すらない無い無い尽くしと言う増してどうしてこう心身消耗してんだっけ

子供の頃に描いていた将来像、それは色んな国の良い所をを取り入れた素晴らしいこの国で、いい大人になること。でも気づいたときにはこの国ではすでにそんな大人にはなれない、果ては成長する側からさせる側へとなっているのに、仕事に明け暮れお金も貯まらず、心すり減らしている自分。悲しいかな殆どの人が痛感しているのではないでしょうか。

乾杯日本の衆信じていたい遍く全員善人でしょう疑念なぞ抱いても肝を突いちゃならん
大きな不安孕んだ正体憚る膨満感に噦いてどこから嚥下できようか未だ皆目消化不良だ

「人は本来、善である」その点はわかってるからこそ、そこを追求しちゃ野暮ってもんよ。でも果たして本当にそうなんだろうか、んーもやもやする!

オリンピックは開催するのかしないのか、コロナウイルスを広めないために自粛しろ、自粛するのは良いが、その分の保証は?

今じゃすっかりコロナ渦で誰もが忘れてしまっている”森友”文書改ざん、とうとう国が存在を認めた赤木ファイル。その責任は誰が一体取るのか。

そんな我々が思ってやまない消化不良な問題が山積している昨今を、椎名林檎が揶揄しているように思われます。

お年召した御仁と幼気な御子さん方

気付いたら許していたお年召した御仁と幼気な御子さん方は恥ずかしそうに黙ってんだ
ぺてんのない世の中を直ぐに作んなくちゃそう願わくばいっそ老いも若いも多弁であれ

自由よいいように搾取されないで安く売らないで終始貴様は誇り高くあって頼むよ
自由フェイクじゃない元来の意味を見せて騙るまじ腐るまじ追い続けていたい貴様をずっと

私が一番気になったのはこの部分。

御仁とは「あのお方」という意味合いが強いでしょうか、しかしながら現代社会においてはひやかしの気持ちを含んでいる事もしばしば。と考えれば、お年召した御仁とは東京五輪・パラリンピックの開閉会式の演出を統括していたCMクリエイターの佐々木宏氏や、東京オリパラ組織委員会の森喜朗元会長、椎名林檎名義でリリースされた「三毒史」に収録されている一曲「急がば回れ」が佐々木氏の一件で注目されましたが、あの曲のリリースは2019年5月、MIKIKO氏が演出を指揮する「執行責任者」に就任したのは2019年6月3日、そう考えると、たまたま自称クリエイターの事を揶揄していただけではと思われます。そして、恥ずかしそうに黙ってる幼気な御子さん方、これは佐々木氏や森氏の取り巻きのことでしょう。そんなペテンに満ち溢れた世の中を変えるためには、老若男女問わず声をあげよう、そう椎名林檎は言っているんだと思います。

椎名林檎は「自由」を誇り高くあって欲しいと言っています。自由とはなんでしょうか、緊急事態宣言中に路上飲みすることですか?違いますよね、自由というのは本来そんな安っぽいものじゃないですよね。

果たしても選ばれざる服従層と知らん間に選ばれし支配層を結ぶ争点
自由という名の富買い叩いて奪い合う尊厳

支配する側とされる側、支配される側にいる我々は知らぬ間に支配されています。トレンドという言葉が溢れ、そこへ群がる行為こそが選ばれざる服従ではないでしょうか。

自分たちは服従してるつもりは無いんでしょうが、支配層は自由を安売りし、我々を支配下においています。そんな我々の中にはもはや諦めしかないですよね。若者の〇〇離れ、という言葉、最近使われなくなりましたが、離れたわけじゃないんですよね、最初からそこに価値を見出ださない、モノに価値を求めない優れた人たちの事を誂っていた支配層。そんな人達を置いてけぼりにし、学生には修学旅行や運動会を諦めさせ、万全を盾にオリンピック開催を強行する世の中。

自由に乾杯!

乾杯日本の衆いつか本当の味を知って酔いたいから樹立しよう簡素な真人間に救いある新型社会

次世代へただ真っ当に生きろと云い放てる時遂に祝うその一口ぞ青々と

自由たる香さぞ染み入る事だろう伝う汗と涙が報われて欲しい皆の衆

お偉方に聞きたいのですが、我々から搾取した金で飲む酒は美味しいですか?

特に贅沢もせず正直に生きてきた人間が、当たり前に手を差し伸べられる社会。

汗水たらして働いた金で、決して高くない酒を気兼ねない友人と飲む、それこそが緑酒。

こんな世の中じゃ次世代を担う若者たちへ真っ当に生きろとなかなか素直に言えませんよね。

自由よ愛しているもう遠去かんないで傍に抱き寄せて終始貴様を尊び敬って求める自由

鳴呼どうしたって意識せざるを得ない逃すまじ失くすまじ愛されてみたい貴様にやっと

椎名林檎を歌を聞く我々世代へと課せられた「自由」という名のバトンを次世代へ渡す責務、そんな方に重くのしかかるプレッシャーをなんとかはねのけ、バトンを渡せたときに初めて我々は「自由」を手にすることが出来る、そんな折にはみんなで盃をかわそう。そして歌詞カードには載っていない歌詞が歌の最後に。

Awakening

Awakeningとは”目覚め”であったり”気付き”という意味です。

日本人よ目覚めろ!

と、我々の肩を押してくれているのではないでしょうか。

終わりに

いかがでしょうか、我々は一見自由に見えるが実はそれは本当の自由ではない、だから自由を愛し追い求めろ!そんなメッセージに溢れる一曲、これは東京事変を代表する一曲になるかもしれませんね。

現代日本においてはアーティストやお笑い芸人が政治的な発言をしたり、あからさまに歌ったりすると、なぜか失望されてしまいます。本来失望する対象は政治や社会へ対してなはずなのに、なぜか皮肉ったアーティストへ向けられがちです。そういった人たちというのは、本当の自由から目を背け、上辺だけ取り繕われたコンテンツだけを押し付けられている方が楽なのでしょう。

ときにグッズなどで炎上することもあった彼女ですが、その歌が批判されたことは記憶にないです。それは彼女が「J-POP」の世界において「職人」だからでしょう。我々が求める歌を作る、そんな当たり前を20年以上も続けている、素晴らしいです。平成から令和へ変わったこのNIPPONをどうか引っ張ってください、我々は貴女について行くだけです。

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